ご挨拶

The Exciting Future of Pharmacologyワクワクする薬理学の未来

第94回日本薬理学会年会
年会長 吉岡 充弘
北海道大学大学院医学研究院
神経薬理学教室

謹啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

平素は本学会の活動に格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
この度、第94回日本薬理学会年会を、2021年3月8日(月)~10日(水)に、札幌コンベンションセンターにおいて開催することとなりました。本学会の開催に当たり、一言ご挨拶とお願いを申し上げます。

大正15 (1926)年、第7回日本医学会において初めて薬理学(当時は「薬物学」と称した)単独の分科会が開催され、そこで日本薬理学会の設立が決定されました。大学及び医学専門学校の薬物学講座を単位とし、各講座主任が評議員となり、毎年1回学術集会を開くことが決定され、全国の29の講座が参加しました。翌年の1927年に第1回日本薬理学会(総会)が東京において開催され、その後、苦難の時代もありましたが94年に渡り、学会としてのidentityを模索・確認しつつ発展してきました。薬理学の歴史はまた近代医学の発展の歴史でもあり、薬理学の貢献なくしては現在のような急速な医療の進歩はありえなかったといえます。

現代の薬理学は「生体内外の化学物質と生体の相互作用を、種々の研究方法により個体、臓器、組織、細胞、分子のレベルを貫いて総合的に研究し、さらに創薬・育薬などの薬物の疾病治療への応用を視野に入れ、薬物治療の基盤を確立する科学」と定義されます。さらにこの基本概念に加え「創薬やヒトゲノム情報に基づく個人最適化医療」が21世紀の薬理学の新しい研究領域となってきました。しかしながら、世界的なレベルで、これからの薬理学を支え、発展させる人材の不足および減少が懸念されています。薬理学の未来を担う研究者をいかに育成していくのか、薬理学コミュニティーにおいて模索が続いています。

本薬理学会年会は、こうした背景を踏まえ、The Exciting Future of Pharmacology、「ワクワクする薬理学の未来」をスローガンとして、薬理学コミュニティーのみならず様々な立場の方々にご参加いただき、最新の薬理学研究成果の発表を通して、薬理学の持つ魅力を発信することを目指し、企画するものです。

薬理学における革新的な発見の背景にはしばしば、新しい研究手法や技術の開発や様々な学問領域の研究者同士の交流と、それに触発される発想の転換があります。本学会では、医学会連合に属する関連学会やアジア・大洋州おける薬理学会との連携シンポジウムや特別講演、薬理学公開講座(市民・薬剤師・医師向け)、看護薬理学カンファレンスに加え、第93回年会で実現できなかった懇親会会場での「創薬オープンイノベーション」も開催予定です。基礎研究のみならず、臨床、企業における様々な研究・教育・医療・企業活動に取り組んでおられます皆様方のご参加により、「薬理学の未来予想図」を共に描き、発信したいと願っております。

謹白