ご挨拶

第95回日本薬理学会年会
年会長 宮田 篤郎
鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科
生体情報薬理学分野 教授

日本薬理学会会員の皆様におかれましては、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

この度、第95回日本薬理学会年会を令和4年3月7日(月)より9日(水)の3日間にわたり、福岡国際会議場及び福岡サンパレスにおきまして開催する運びとなりました。本会の開催にあたり、開催を担当します西南部会を代表しまして、一言ご挨拶を申し上げます。

薬理学は、遺伝子から生物個体までを包括的に研究対象としながら、生命現象の探究、病態の解明、薬物治療の基盤構築を遂行し、他の基礎医学と共創する形で基礎と臨床のシームレスな連携の要を担う基盤的総合科学として、新薬の創薬或いは育薬を通して、医療・医学の分野に広く貢献して参りました。日本薬理学会は、日本医学会の分科会を前身として1926年に設立され、以来、学術集会が毎年年会という形で開催されてきております。薬理学に関連する諸分野で活躍されている方々が一堂に会し、学術的な発表・討論を行うと共に、親交を深めるまたとない機会となっております。しかしながら、COVID-19の世界的パンデミックのため、残念ながら昨年の第93回は誌上開催となり、本年の第94回は、Web形式を交えたハイブリッド開催となりました。現状、国内コロナ感染は予断を許さない状況ではありますが、ワクチン接種が速やかに実施されるなら、来春の第95回の頃にはある程度落ち着いているであろうとの見込みで、現地開催を主体とした通常開催を目指して準備を進めております。

第95回年会では、学会テーマを「イノベーション・コモンズ〜その知の創成と継承」と致しました。薬理学とは、元来薬物と生体の相互作用を解明していく学問ですが、21世紀に入り、薬物の概念が大きく変わり多様化してまいりました。従来の合成化合物質一辺倒から、DNA或いはRNAによる遺伝子治療、モノクローナル抗体などの蛋白製剤、iPS細胞に代表される再生医学が導入される一方で、化学物質としての薬物におきましても、種々の分子標的医薬品が開発されてきております。これらは、現代医療の治療選択枝の幅を拡げ、ゲノム科学の進展によって大きく変革してきたevidence-based medicineからprecision medicineの推進に大きく貢献するところであります。これらのイノベーションは、生理学、分子細胞生物学、免疫学、腫瘍学、病態生理学、病理学など様々な基礎医学が、薬理学のフィールドを共創の場即ち「イノベーション・コモンズ」として、協調的に創成してきたものであります。それらイノベーションにおける薬理学ならではの貢献を一言で表すとすれば、validationとevaluationであり、そのためのassessment toolの創意工夫こそ薬理学がこれまで蓄積してきた知恵であり知識として、次世代に継承して行くべきものであります。薬理学のイノベーション・コモンズとしてのプレゼンスをさらに高めるため、本年会が、関連する学術団体とのさらなる交流を発展させる機会となることを期待する次第であります。

開催地となる福岡は、日本各地から空路・陸路共にアクセスが良く、九州の玄関口としてだけでなく、韓国や中国などのアジア諸国にとっても利便性が高い国際都市でもあります。福岡は歴史的遺跡も多く、中州に代表されるような魅力的な風情にあふれる街であり、西南部会ならではのおもてなしが出来ればと思っております。

ポスターの題材となっている絵は、私どもが懇意にしている画家に描いて頂いたもので、「みんな集まれ」というテーマです。第95回年会に相応しく、コロナ感染で集まれなかった状況を打破することにより、薬理学会の活性化を図ることが出来ればと願う次第です。

是非とも来年3月には、福岡にご参集頂き、本年会が実り多き学術集会となりますよう、ご協力ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

令和3年5月吉日